
秋田市立日新小学校
耐火構造であるRC造の東西階段棟を設けて3,000m2毎に防火区画を行い、東西教室棟・メディア棟を木造3階建て1時間準耐火構造とし、大規模な木造校舎を実現した。秋田市公有林を活用し、秋田杉をふんだんに使用し、多くの柱・筋交い・メディア棟吹抜上部梁架構を現しとしている。
耐震性能はバランスよく配置した筋交いで確保し、柱梁接合部のモーメント接合は期待しないため、小断面化と接合部コストの削減を可能にしている。
現しとなる柱・梁は燃え代設計を、筋違は耐震要素のため燃え代設計は不要となる。
柱・筋交いは圧縮・引張力が主となるので、表しとなる部位に秋田杉集成材を積極的に採用し、被覆される梁・柱・筋交いは強度の高い国産カラマツ集成材を使い分けた。
メディア棟の屋根架構は外周架構を除いて2本の600Φ秋田杉集成材大黒柱とカラマツ集成材による方杖による力強い架構とし、柱の座屈拘束および梁のたわみ量を削減する細やかな側方杖を方杖・梁を挟むように配置することでダイナミックな樹状の架構を構成している。大黒柱および方杖は燃え代設計となり太い断面の「幹」に、側方杖は耐震要素なので燃え代設計は不要なので細い断面の「枝」となる。力強さとしなやかさを合わせ持つ架構表現は学校教育の空間にふさわしいと考える。
柱梁筋交い接合部はRC基礎との接続を含めてGIR(Grood in Rod、鉄筋と樹脂による接合)工法を主に、小梁などの接合は住宅用梁受金物を併用してコストダウンを図っている。
大アリーナ屋根は鉄骨トラスとし、20mの無柱空間を少ない鉄骨量で実現している。
全建物を直接基礎で設計しつつ、不同沈下抑制杭として木杭(環境パイル)を地表面-5m程度の杭長に留めている。敷地は地表面-10m以深に地下水位があり、周辺の地下水を利用する酒造や家屋に影響を極力与えないため、コンクリート系既製杭やソイルセメント系地盤改良杭と異なり、杭打設時にセメントなどを使用しないため、地下水への影響をほぼ無くすことを意図した。
メディア棟架構模型を寄贈し、架構説明文作成にもトライした。けんちくこうぞうに興味をもつ児童がひとりでも出てくれたら、と期待を込めて。